【ネタバレ感想】アニメ『葬送のフリーレン』第2期 第29話(第2期1話)「じゃあ行こうか」
【ネタバレ感想】アニメ『葬送のフリーレン』第2期 第29話(第2期1話)「じゃあ行こうか」
2026年1月16日、あの静かで温かな金曜の夜が帰ってきました。一級魔法使い試験という大きな区切りを終え、再び北を目指すフリーレンたちの歩み。特別なプロローグではなく、馬車の揺れる音と共に「それじゃ、行こうか」と始まる空気感に、また彼女たちに会えたんだという期待感が静かにあふれてきました。
総評:積み重なる時間と音が導く、静かなる再始動
「パーティとは」「逃げたくなったらみんなで逃げればよい」など仲間の在り方を深く考えさせられるシーズン2最初のエピソードとして、ぐっとくる回でした。またフリーレンを見られるんだという期待感があふれてきました。楽曲が全体的に素晴らしく、新しいOP曲、ED曲も物語の導入と余韻にとてもよくて、物語の価値を高めていると思いました。「勇者ヒンメルの死から……」の時の劇伴を聴くたびに、子供のころに好きだったグリーンスリーブスの曲とともに望郷の念が浮かぶのは私だけでしょうか。
今期の新OP、Mrs. GREEN APPLEの「lulu.」は、1期の「勇者」が持っていた鋭い決意とはまた違い、どこか開かれた場所へと向かうような爽快さが印象的でした。サビでフリーレンが歩む背後に、かつての勇者一行の残像がふっと重なる映像。斎藤圭一郎監督の「時間の積み重ね」へのこだわりが、軽快なリズムと同期していて、一気に物語の世界へ引き込まれる感覚がありました。
一方、miletさんによるED「The Story of Us」は、すでに共有された時間を慈しむような包容力に満ちていました。馬車の進行音や、最後に「ふっ」とろうそくを吹き消す音。こうした何気ない生活の音が、劇伴が止まった瞬間の静寂を際立たせていて、魔法を失った彼女たちの心細さを優しく縁取っているように感じました。1期の旅立ちの予感に満ちた曲調に対し、今期の楽曲は旅の積み重ねを感じさせる落ち着きがあり、音と映像の重なりが作品の奥行きをさらに深めているように思います。
第29話 じゃあ行こうか
旅の再開は、馬車に揺られる三人のなんてことない会話から始まりました。シュタルクが「財布はだいぶ涼しくなってきたみたいだぜ」とぼやけば、フェルンが「常に先の先まで考えていかないと」と即座にたしなめる。この、どこか家族のような距離感には安心感を覚えます。フェルンの腕にある鏡蓮華のブレスレットがふと映るたびに、言葉にしなくても彼女が受け取った想いを大切に抱えて旅をしていることが伝わってきて、冒頭から温かな気持ちになりました。
道中、フリーレンが見つけた「封魔鉱」を巡るやり取りは、三人の価値観のギャップが面白く描かれていました。「この大きさなら豪邸が買えるね」と鼻を高くするフリーレンに、フェルンが「早く捨てちゃってください。全滅しますよ」と冷静に返す温度差。極めつけはフリーレンの「めっちゃ魔力を込めるとね、めっちゃ光るんだよ」という、どこか自慢げな一言。シュタルクの「まぶしい」という困惑も含め、この噛み合わなさは見ていてたまらないですよね。まさかこの「めっちゃ光る」特性が、後の窮地で役立つとは思いもしませんでした。
湿地帯の崩落で地下洞窟へ真っ逆さまに落ちたシーンでは、一転して緊張感が走りました。洞窟全体が魔法を無効化する封魔鉱でできていて、魔法使い二人が文字通り無力化される異常事態。フリーレンが「魔法の使えない私たちは、ここではただの女の子だ」とおどけて見せましたが、その直後にシュタルクへ向けて「クソババアって言ったこと、忘れてないから」と釘を刺す執念深さにはつい笑ってしまいました。女の子?とシュタルクがつぶやくのに対して「クソババア」と言われたことをいつまでも覚えている描写は、彼女らしくて微笑ましいです。
暗闇から「毒極竜」が這い出してきた瞬間は、手に汗握る感覚がありました。魔法が出ない極限状態、頼れるのはシュタルクの斧一本です。震える足を押さえ、自らを鼓舞するように斧を構えた彼の背中。咆哮と肉体がぶつかり合う衝撃音が響く中、フリーレンが語った「パーティーっていうのは、命を預け合わないと機能しないんだ」という言葉が重なります。恐怖を認めながらも最前線に立ち続けるシュタルクの姿には、戦士としての静かな、でも確かな迫力が宿っているように感じました。
窮地を救ったのは、かつてのヒンメルの言葉でした。「逃げたくなったら、みんなで逃げよう。僕たちはパーティーなんだから」。無理に戦うのではなく、三人で一緒に、例の「めっちゃ光る石」を掲げて全力で逃げ出す姿。無事に逃げ切ったあと、あのシュタルクが「腰が抜けて歩けない」と力なく零すシーンには、彼の本当の頑張りが見えてつい頬が緩んでしまいます。
ラストの宿場町での一幕は、三人の絆の深さが伝わってきました。ヴィアベルの勧誘を「俺はこのパーティーの前衛だ」と断ったシュタルク。無理やり誘われたと思っていたフリーレンに対し、実はフェルンが彼の背中を押したことで自ら選んだ旅だったという描写は、お互いを思いやるメンバーの絆にぐっときました。夜、シュタルクがフェルンに「もっと優しくして」と本音を漏らし、フェルンが「じゃあおいで、いっぱいなでます」と提案してシュタルクが「怖い!」と怯えるあの掛け合い。結局いつもの距離感に落ち着くところに、この二人らしい不器用な信頼を感じて、心地よい余韻と共に幕を閉じました。
次回の予想
次回のタイトルは「南の勇者」です。ついに、人類最強と謳われたあの勇者の足跡が明かされることになるのでしょう。ヒンメルたちが旅立つさらに前、たった一人で魔王軍の七崩賢を相手に未来を切り拓こうとした男。
彼が「全知のシュラハト」との戦いの果てに見た景色。そして、フリーレンに託した言葉。原作で描かれたあの圧倒的な「意志」の力が、アニメーションとしてどう表現されるのか。ただの最強の物語ではなく、今のフリーレンたちの旅路にどう光を落とすのか、期待感に胸が膨らみます。かつての仲間の足跡を辿りながら、新しい勇者の物語がどのように紡がれていくのか、一秒たりとも目が離せません。